私は高速自動車運転士であり、電車運転士ではありませんが、限界速度コーナリングの専門家です。
ある有名サイトに執筆していた頃「専門外の人間が勝手な推論をするな」とか「自動車と電車は全く別もの」と少なからず非難を浴びたこともありました。
電車運転士とドライバーは、ともに運転者でありながら全く別の存在です。ですからドライバーの記事に電車の話は不要と多くの方が思うでしょう。
普通ドライバーがテーマならばそのとおりです。
上級ドライバーの定義の中には高度なドライビングスキルも含まれます。
ですから運転技術に上級を求める方、とくに公共交通に関わるプロドライバーには、この事故から改めて考えて頂きたいと思います。

あれから2年の月日が過ぎ、今年の4月頃には報道番組で「JR西日本福知山線脱線転覆事故」が取り上げられていました。
その内容を見るに「事故原因は未だに解明されていない」とか「JR西日本の企業体質」ばかりで、事故の核心に触れた報道を見る機会はありません。
事故の原因究明は事故の再発防止に役立たねばなりませんから、ATS(自動列車停止装置)を導入することで事故現場への列車進入速度を規制したJR西日本の方策は間違っていません。
でもそれだけで良いのでしょうか?

「JR西日本福知山線脱線転覆事故」の直接誘因は運転士のスキル不足です。企業体質や過密ダイヤは間接誘因に過ぎません。
もちろん、電車と自動車は違います。事故を起こした福知山線の電車は7両編成で自動車は単独1台、電車には台車金属車輪、自動車にはタイヤが付いています。
電車はレール上を、自動車は道路上を走っており、同じように考えるには無理があります。
ただし、電車も自動車も同じ地球上を走る乗り物である以上、コーナリングと加減速においては物理的に同じ力を受けるのです。
さらに電車は自動車よりも不利な条件を持っています。慣性重量(複数の車両が連結され多くの乗客が乗っている)の大きさ、そしてレール上を走ることです。
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